【続】フォックスコン11人連続自殺事件

ということで、いただいたコメントにもありましたが、前回の記事を書いたその翌朝に次の自殺が発生してしまいました。

10番目の自殺からわずか4日後の事でした。5月に入ってから5人目であり、6番目(5月6日)から、5日後(11日)、3日後(14日)、7日後(21日)、4日後(25日)というハイペースで自殺が起こり続けています。

今回の自殺者は湖南省出身の李海さんという19歳の男性で、工場で働いてわずか42日目でした。

11番目の自殺が発生した、25日の午後、フォックスコン名義で、「フォックスコンの従業員への手紙(至富士康同仁的一封信)」と題した一通の手紙が従業員に配られました。

それが早速、従業員によって「南方都市報」にリークされました。

http://gcontent.nddaily.com/8/c6/8c6ff9e1b53e7e1f/Blog/752/43b4a3.html

ついでに紹介すると、この記事の最後には情報提供者四人にそれぞれ100元(1300円くらい)を謝礼として渡したとばっちり書かれています。他にも新聞や新聞社のホームページにも、ホットラインが記載されていて、市民からのスクープを促すように出来ています。

さて、この文書の内容は、従業員への通知と、従業員の署名を求める誓約書の二つに分かれています。

通知の部分は、①本人、もしくは同僚に精神面等も含めて問題があれば、いつでもホットラインに電話してほしい、事故の防止につながれば報酬を出す、②当社は自殺を含む従業員への問題に対しては、法律の範囲を超える保証はしない、の2点が主な内容です。

誓約書の部分は、各従業員に対して、①なにかあったら直ぐに相談する、②必要な場合には、会社および同僚が直接家族等に連絡をとることを認める、③精神および身体に異常があり、必要な場合には、企業(フォックスコン)が本人を病院に入院させることを認める、④企業に責任の無い原因で自殺を含む事件が起きた際には、企業が法律に則って問題を処理することを認める、また、家族及び本人は法律に定められた以外の「行き過ぎた要求」を行わず、企業の名誉を傷つける、もしくは、生産活動を困難にする「行き過ぎた行動」を決して行わない、ということが主に書かれており、署名するようにいわれているそうです。

見ての通りの、事件に関わるトラブルを軽減し、逃げを打つためだけのような文書で、事前に用意していたのかもしれませんが、11人目の自殺がその日のうちに配る、その感覚には驚かざるを得ません。

この記事の掲示板を見ると、「12人目は郭台銘(フォックスコン総裁)だ!」とか「台商(台湾商人)は、大陸の人間を人として扱わない、美女以外は」とか、その手の書き込みが散見されます(決して多いわけではないです。多いのは、自殺の理由をめぐる議論です。)

前回の記事で書き足りなかったことですが、そもそも、フォックスカンの工場でも労働者は自由に辞めて、他の職場を選ぶことが出来るはずです。前回紹介した「南方週末」のレポートでも、やめる人も多いこと、さらには、一度辞めてまた戻ってきた労働者や、より安全なポストを求めて(配属は運で決まるらしい)意図的に辞めてまた入り直す労働者までもが紹介されていました。そういう条件下では、労働市場全体としては、よりより労働環境を求めて労働者の移動が行われる(いわば「足による投票」)ハズです。

そんな中で、どんなに、労働者の移動による労働環境の改善が微々たるものであろうと、また、時には思いつめて自殺をしてしまう人がいたとしても、フォックスコンの工場でのみ次から次へと自殺が相次ぐことは、やはり不自然に思えてなりません。果たして、ただフォックスコンのみが、飛び抜けてブラックであり続けることはありうるのでしょうか?

なお、南方都市報が特集ページを設けていたので紹介しておきます。
http://www.nddaily.com/comments/focus/201005/t20100518_1129727.shtml

あ、あとmixiニュースにもこの事件が掲載されたみたいで、結構コメントがついています。
http://news.mixi.jp/view_news.pl?id=1221745&media_id=52