日本の労働市場

以前から城繁幸氏の文章は、本もブログも最高に面白いと思っていて、欠かさずブログをチェックしています。どの記事も基本的に面白いのですが、今日の記事が比較的面白いのでこの機会に紹介してみます。

http://blog.goo.ne.jp/jyoshige/e/96aeeb34f6e0be8df8e6c5582d982a57

なんで城氏の文章が面白いのかと言えば、城氏の皮肉の効いた軽快な冗談もさることながら、基本的には日本の労働市場問題そのものが悲劇的で、ある意味では興味深いということなんだと思います。

城氏のブログで面白い記事をもう二つだけ紹介すると、

http://blog.goo.ne.jp/jyoshige/s/%A5%AB%A5%F3%A5%D1%A5%CB%A1%BC
「日本型雇用では、そういうギャグみたいなことをみんなで続けるしかないのだ。」

http://blog.goo.ne.jp/jyoshige/e/8a96e06006445534415154c21a7e0cb2
「若い子をつかまえて「おまえなんてクズだ!辞めちまえ!」というのは、その会社の高いコンプライアンス精神のあらわれと思っていい」

などと言うのは、まさに悲劇としか言い様が無いのだと思います。

現在、世界中から人(商売人)の集まる広州に住んでいることもあり、中国人以外にもいろんな国の人と話をする機会がありますが、「日本の労働市場」についての話はある意味で鉄板といっていいほど外国人の興味を引きつける話題です。

・日本には「就職留年」という習慣があり、最近は大学側が制度化を始めた。

・日本には「窓際族」という言葉がある。また、「社内失業」と言うこともある。ちなみに給料は同期入社の他の非窓際族と比べて大きな差はない。

・「内定取消」が社会問題になり、企業が百万円もの金を学生に渡した。

・「失われた世代」という社会問題があり、日本ではどの年に大学を卒業するかがその後の生涯収入を分けることがある。

・女性が結婚後子供を産み育てるために退職したとする。その後は再就職したとしても大抵は給与がぐっと下がる。ひどい場合には、学生がやるようなバイトしか仕事が見つからない。

・退職金と年功序列制度という制度を組み合わせ、長く勤めなければ損をする仕組みがある。

・あなたが日本で働きたいとする、大手企業の正社員になるためには、日本に留学して四年制大学に通って卒業する年に新卒内定を取らないと厳しい。(と書いたら、日本語の上手な中国人の友人に、これら条件を満たしても厳しいと、ごもっともな指摘を受けました。それはそのとおりで、①もともと外国人に対する求人が少ない、②必要以上に日本語能力を重視する(ほぼ日本人並でないと厳しいかも)、③能力を判断される前に、日本の学歴査定がそのまま適応される、の三点を考えられる障壁として説明してみました)蛇足だが、留学したとしても授業はつまらなく、教授もあまりやる気がない。たまに能力もない。学生も勉強などする気はなく、ここが最後の天国とばかり気が狂ったように遊んでいる(つまりどっちもどっちだ)。

などなど、まだまだ話題はあるのですが、これらの話を外国人にすると、まるで御伽の国の話を聞いているかのような反応を示してくるのです。(日本事情に詳しくて、ネタバレしていることもありますが)

なかにはあまりの「クレイジー(北欧のとある人いわく)」っぷりに、嘘を言っていると思う人もいたり、更には「そんなことは起こりえない、なぜならば・・・・・」と精一杯論破しようとしてくる人もいます。その場合には、もちろん丁寧にひとつずつ説明していきます。

中国も含めて、転職を繰り返してキャリアアップを図る海外の人からすると、「多くの企業が終身雇用を前提としていると、転職しないことが普通だから、たとえ転職しようとしても十分な需要がない、それにともなって・・・・」などという理屈は、もしかしたら、まるで「もし魔法が使えたら〜」、「動物が言葉を話したら〜」などという空想の世界に近いものがあるのかもしれません。

日本の中で長い間常識となっていたことが、他の国の人から見てみるとこうも違って見えるものかと興味深く思ったものです。

海外にいる方は、ぜひ一度話題として試してみてください。

最後に、この日本型雇用慣行がさらに悲劇的なのは、「変だ、おかしい」と言うことは簡単で、いろいろな人がボカスカ言いまくっているにもかかわらず、解決策を示すとなると一気に難しくなることです。私も、何も言えることは無く、今回はここまでにしておきます。