フォックスコン12人連続飛び降り事件(その3)

ということで、追記を書くたびに人数が増えていって本当に怖いのですが、12人件目も発生してしまいました。

最初に訂正ですが、12人というのは飛び降り自殺を「図った」方の数で、2名の方は未遂なので、正確には「連続飛び降り事件」です。

昨日、今日とで、アップル社が初の声明を出したこともあるのか、日本での報道も格段に増えた様ですし、海外大手メディアもこぞってとりあげているようです。

Googleニュース検索(日本語)
http://www.google.co.jp/search?hl=ja&safe=off&tbo=p&tbs=nws:1&q=%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9%E3%82%B3%E3%83%B3&btnG=%E6%A4%9C%E7%B4%A2&aq=f&aqi=&aql=&oq=&gs_rfai=

Googleニュース検索(英語)
http://news.google.com/news/search?aq=f&pz=1&cf=all&ned=us&hl=en&q=foxconn

別にブログ上でこの事件を追い続けようというつもりは無いのですが、昨日(26日)一日で色々と展開があったのでもう少しだけ書いてみます。

1.フォックスコン総裁記者会見等

11人目の飛び降り事件が発生した翌日に当たる26日午後、フォックスコンの郭台銘総裁が国内外の記者を招待して工場案内を行い、併せて記者会見を行いました。

写真・記事1
http://gcontent.nddaily.com/d/ba/dba132f6ab6a3e3d/Photo/41f/45997f.html

映像・記事2
http://gcontent.nddaily.com/1/47/147702db07145348/Blog/5aa/63cce1.html

工場案内の際には、工場の労働者達がアイドルでも追いかけるかの如く総裁を取り囲み、サインや記念撮影を求め続け、総裁はそれに応じながら、メディアにたいして「こういうところも見てくれ、彼らのような従業員が大多数なんだ、健全でしょう」という一幕も。

連続飛び降り問題については、映像にも出てきますが「仕事のストレスや工場の管理とは直接の関係はない、生まれつき持つ個性、もしくは、感情の問題と関係している」との説明を行いました(翻訳にあまり自信がないですが)。

記者からの「なぜ深センのフォックスカン工場に自殺事件が集中しているのか?」という質問に対しては、「フォックスコンに自殺事件が集中してはいない。工場では45万人もの従業員が働いている、比率を考えるのであれば、科学的な見地から問題を見て欲しい。日本の若者の自殺率はどのくらいか、あなたは調べたことがあるか?」とのコメント。

そして、記者会見では自殺を防げなかったことに対して三度頭を下げて謝罪を行いました(伝統的な謝りかたらしいです)。

昨日の記事で紹介した「フォックスコンの従業員への手紙(至富士康同仁的一封信)」については、「これまで(自殺の)補償金を高く出しすぎており、そのことがある意味で自殺の誘引となってしまっていたため、補償金を引き下げる必要があった。法務部が文章を修正する中で、署名を迫るような文章になってしまったが、もし私が目にしていたら配布を許可しなかった。」と述べて、謝罪の上、文章を回収することを発表しました。

2.政府等の声明

中央、省、市の政府・党機関からもいろいろとコメントが出てていますが、一番詳細に報道されていたのは深セン市のスポークスマンのコメントです。

連続飛び降り事件の原因について、「個人の観点から見ると、これらフォックスコンの工員の大多数は80後、90後(中国で流行している世代区分で、それぞれ生まれた年代を表しています)であり、思考が不成熟で、社会経験もまだ浅く、心理的に弱いところがあり、感情の問題や環境変化、仕事や生活上の圧力に対する適応能力が不足している。企業の観点から見ると、フォックスコンは43万人の同年代の工員が一箇所に集まって働いており、そこに企業管理や「文化建設(訳せないので中国語のままです)」の問題が加わると、容易に感情との間でシナジー効果が生じてしまう」という分析を表明しています。

先程のフォックスコン総裁のコメントもそうですが、そもそもそんなに自殺の要因ははっきり分析できる性質のものなのか?また、総裁はまだしも、市のスポークスマンがコメントするポイントなのか、というところは、やはり日本人からすると違和感を感じます(同じような事件が日本で起こって、当該自治体の職員がこんなコメントをしたらどうなるでしょうか?)

3.フォックスコンの対応について

1.で述べた記者会見で緊急対応策が発表されました。

①飛び降り自殺が発生しかねない場所に安全ネットを張る(全部で1.5平方キロになるそうです)

②従業員を50人くらいのグループに分けて管理する。

③70人の専門医師を雇用し、100人の従業員に専門の研修を受けさせて心理カウンセラーとする

ということです。

③について、26日付の「南方都市報」には、王さんという研修中の方のコメントが紹介されていて、曰く、「研修中はみんな携帯をいじったり小説を読んだり好き勝手しているよ」とのことで、5月初めに行われた試験でも、教科書を持ち込んで回答したとのこと。

これに対するフォックスコンのスポークスマンのコメントも紹介されていて、「なんで研修を怠けるんだ、そんなやつがメディアから取材に対する謝礼を受け取るのか?我々は専門のフルタイムカウンセラーが不足しているし、政府にできることにも限界があるから、従業員を育成することにしたんだ。そんなふうに研修を怠けていて心理カウンセリングをしたら、誤ちが起きてしまうだろうが!」とのこと。

4.日本の自殺者数

今日、中国人の友達とこの問題を議論しながら、すこし調べてみたのですが、フォックスコン総裁も言及している日本の年間自殺者数、なんと2005年で3万2千人もいたそうです。

http://www.lifelink.or.jp/hp/statistics.html

この割合をフォックスコン深セン工場の従業員数である45万人(記事によって異なりますが、総裁が映像でも述べているのは45万です)に当てはめると、だいたい年間120人くらい自殺者が発生するという計算になります。日割りすると、3日に一人自殺することになってしまいます。私の実家がある市の人口が40万人くらいなのですが、あわせて考えると、恐ろしくなるとともに、いろいろと考えさせられます。

いろいろと示唆するところはあると思いますが、今回はここまでにしておきます。

ついつい書き続けてしまいましたが、決してブログ上でこのニュースを追い続けていくわけではないので、進展があっても更新しない可能性が十分にありますが、あしからずです。